「猫多頭飼いの末路」

 

我が家は十八年間、九匹の猫たちと暮らして来ました。

敢えて飼っていたと言う言葉は使いません。

猫たちに食事をやって飲み水を取り替え、トイレ砂を新しくする。

 

食事以外はすべて妻の受け持ちです。

娘の九才の誕生日のプレゼントに雄のアメショーを一匹買ってやったのですが、それが全ての始まりでした。

 

娘に豹のような野性味あるアメショーの世話は所詮無理でした。

結局生まれてからそばに猫がいなかったことのない私が、面倒をみることになりました。

 

以来十八年、娘は結婚して家を出ましたので、名実ともに私と妻が猫たちをみることになりました。

私は雄の最年長のクーに太腿を噛まれ、救急車で病院へ行く大事件もありましたが、先月までに八匹が次々と亡くなり、最後に雌猫のウミだけが残りました。

 

十八年間に八匹亡くなってしまったわけです。

みんな中野の蓮華寺で火葬し、供養してもらいました。

一匹の猫の費用が五万円。もっと安いところもあるようです。

 

妻と二人で八匹を最後まで見届けました。

涙を流さなかった時は一度もありません。

私の子供であり親友であり恋人であり、かけがえのない八匹たちでしたから。

 

家中猫であふれていたあの頃が、今はたまらなく懐かしい。

残ったウミが、夜鳴きながら息子を探すのが涙を誘います。

 

先月、杉並区の獣医師会から、十七歳まで生きたタロとモモが表彰されました。

ペットの多頭飼いが問題になっている昨今、九匹も飼っている我が家もきっと注目されていたのでしょう。

 

今は残る一匹のウミを、九匹分可愛がっています。

十八才を超えた彼女とも、いずれ別れの時が来るでしょう。

生きとし生けるもの、会うが別れの始めです。

 

老猫ウミとの一分一秒を、大切に大切に過ごしています。

亡くなった八匹との数えきれない思い出と暮らす多頭飼いの哀しい末路です。